愛しの殺人鬼
第1章 ひまわり畑
「……変質者ですか」
現れたのは、やけに顔立ちの整った変質者だった。
そして私の言葉にきょとん、とした爽やかな男はおかしそうに笑った。
「失礼な女」
「ナイフ投げてくる人に言われたくないです」
「だって、君が死にたいって言うから」
「言ってないですね」
それらしきことは言ったけれど今とは言っていない。
姿をみるまではバクバクとしていた心臓も、呆気にとられたように落ち着きを取り戻していた。
物騒な人かもしれないと思っていたけれど、ただの飄々とした若い男だった。変わってることには変わりはないけれど。
ほ、と息を吐いて肩に入れていた力を抜くと、男はつまらなさそうな顔を浮かべて木に突き刺さったナイフを抜いた。
「残念。君、死んだら絶対綺麗なのに」
「…爽やかな笑顔を浮かべながら物騒なこと言わないでください」
「ふーん、俺が爽やかに見えるんだ」
くすり、と笑みを零した声が聞こえて、心底面倒な男だと思う。ムッとして顔をあげると、思った以上に近くにあった男の顔にはっと息を飲んだ。
「、」
まるで金縛りにあったかのように、男の射るような
力強い瞳に縛られて動けない。