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アイドルとキャバ嬢

第1章 第一章

机上には多額の借金返済の請求書。

目の前には弱ってしまった母。

「お母さん、大丈夫。私がなんとかするからね」

そっと母を抱きしめ涙を浮かべた私は決心を固めると

夜の街に足を踏み入れた。

足を止めた先には『キャバクラ』と書かれた看板。

「お、君かわいいね。でもまだ高校生じゃない?」

ニヤニヤしながら肩を回してくる男。

きっと店の人だろう。

「わたしをここで雇ってください」

それを聞くと男の人は大歓迎だよ、と言い私の

腕を掴んで店の中へと引っ張った。

「わぁ…………」

おじさん相手に笑顔を絶やさない女性たちと

ドラマで見たことがあるセットに感動してしまう。

早く来い!という声にハッとして着いて行くと個室に

入れられた。

そこには黒髪 短髪で整った顔の男性がソファに座ってい

た。

「突然だが、君にはテストをしてもらう」

テ、テスト……?

そしてひそひそ声で続けた。

「目の前に居る男前が誰か分かるか?」

「いえ、分かりません」

「……君の家にはテレビがないのか?」

「ありますが、電気代節約のためあまり見ません」

「なんと………実は目の前の方は人気アイドルグループ

クオリーのメンバーだ」

そう言われてもピンとこなかった。

「先輩アイドルに連れてこられて初めてキャバクラに

きたようなんだが慣れない環境のせいか体調が悪いらし

い。そのため個室で休憩していただいているんだが

今キャバ嬢に空きがない。だから君が相手をしなさい」



「はい……?いやいや体調悪いならそっとしておいた

ほうがいいのでは?」

「しかし店のルールでお客様には嬢を1人つけてこの

店を気に入っていただいてまたご利用していただける

よう努力すると決めているんだ。

ここで働きたいならまずこのお客様を満足させなさい」

分かるような分からないような状況だがお金が欲しい

私に選択肢は一つしかなかった。

「わ、わかりました」



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