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第3章 疑いーENA sideー

初対面の時の彼を彷彿させるおどおどした姿に思わず吹き出しそうになる。


この日はホームページに掲載する写真と、ポスターの撮影もあった。
衣装や装飾物の微調整の為、芹菜と撮影の様子を見ていた。


「はー、さすがアイドルの人だねー。 さっきまでオドオドしてたのに、撮影に入ると表情変わるね」
「でしょー。 前雑誌の撮影の時もそうだった。 引き込まれるよね」
「あんたは浮気男がいるんだから引き込まれちゃだめだよ」


芹菜はほんとに発する一言がきつい…


「浮気男じゃないもん」
「絵那は仕事はめっちゃ出来るのに男見る目ないからなぁー」
「男のいない芹菜に何言われても響かないもーん」


横目で睨みをきかせてくる芹菜がなんとも可愛い。
撮影の合間合間に演者さんの衣装を手直ししに行く。


「すみません、襟ちょっと直しますねー」
「あ、絵那さん、ありがとうございます」
「はい、大丈夫です」


撮影が滞りなく終了し、衣装を回収して衣装室に戻る。


「私って勘いい方だよね???」
「何急に??? 浮気疑惑は当たらなかったけどねー」
「それもまだ納得してないから」


衣装にアイロンを掛けたりシワを伸ばしたりしていたら、芹菜が急に変な事を言い出した。


「大森くん、多分絵那に気あるよ」
「えー、芹菜まで言うー??? こないだ西埜くんにもそんな感じの事言われてめっちゃ食い気味に大森くんの事勧められたんだけど」
「ほらー!! 見てたら分かるもん!! 大森くん、絶対絵那みたいなタイプが好きなんだよー!!」


そんな事言われても…
私には雄一がいるし、それにアイドルの方に好かれる要素がこれといって見当たらない。


「いや、なんでキラキラしたアイドルの子がわざわざ6才も上のアラサーの女好きになるよ。 ありえないでしょ」
「分かんないよー、絵那にいちいち言ってないけど、あんたパッと見小さくて可愛いのにめっちゃ仕事出来るし、そのギャップにやられてる同業者結構いるよ」
「パッと見は余計だよ」

褒められたのだろうが褒められた気がしない。
でも初めて聞いた…
同業者で??? 私を???
それを言うなら芹菜だって…

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