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LOSE and ABTAIN

第1章 Lost things

少女の目が覚めたのは午前8:30だった。目が、覚めたといっていいのか。

厳密にいうと意識が戻った、である。

『ンッ?』 確かに脳は働いている。なのに、金縛りにあったように体も動かなければ見ている先が開けることもない。

そんな矢先、少女の右手を握る人物があった。

「俺だ。星太(しょうた)だ。おはよ。」

低く、聞きなれた声は少女にとっての幼馴染の、如月星太(きさらぎしょうた)であることは確かだった。

『星太、ここは?』色々聞きたくて、口を開いて言葉を発しようとする少女。

だが、少女にはもう“声帯”がない。 つまり、“声”がない。

今、発しようとしている少女の声は、自分の心で止まり、それが誰かに伝わることはもう、二度とないから少女の発した言葉は空気となって消えた。

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