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君の隣

第3章 衝撃ーNONA sideー

重い足取りのまま大学の資料室へ向かう。


資料室は講義室とは別棟にあるので普段はあまり学生の行き来はないが、図書館に置いてある文献よりも詳しい文献が揃うので、課題提出が近くなると出入りする学生が増える。


午後の講義の最中に来て正解だった。
資料室のある棟は人の気配がなかった。


誰も居ないとは分かっていながらも一応ノックしてからドアを開ける。


入ってすぐに異変に気付いた。


視界に入ってきたのは、壁に寄り掛かるようにして抱き合い口づけ合う男女。
今にも事に及びそうな状態の男女を目の前に、足が震える。


待って…、何で…、何この状況…、よりによって今の私にはキツい…


ノックの音に気付いたのか、男の方と目が合った。


あ…、及川くんだ…


その後すぐに女の子の方もこちらに気付き、身体を離した。


「あーぁ、見られちゃった。 じゃあ、また今度ね。 ばいばい」


そんなに残念そうでもなさそうに形だけ残念がり、身なりを整え彼女は私の横を通り過ぎて行った。


「ごめんね、なんか。 変なとこ見られちゃったね」


昨日の事を思い出さまいと思うけど、脳裏をよぎり、足が震える。
でも及川くんが何て事ないように振る舞うから無性に腹が立つ。


「一応芸能人なんだし、こーゆー誰でも使えるような場所で、あーゆー事しない方がいいと思うけど」
「うん、そうだね、ごめん。 今後気を付けるよ」
「別に、謝られても、私には関係ないけど」


なんとか平常心を保ちながら本棚の方へ向かう。
よく考えると及川くんとちゃんと話すのもこれが初めてだけど、最初からあまり良い印象は持っていかなった上に今の事もあり、印象は最悪だ。

早く帰ればいいのに…


「資料、探してるの???」


突然後ろから話し掛けられビクッとなる。


「あ、うん… 課題来週だから…」
「俺、来週の講義仕事で出れないから昨日課題出してきたんだ。 これ、まとめやすかったよ」


後ろから手を伸ばし、棚から1冊取り出し私に差し出した。

関わりたくない…
けど、断るのも厄介な気がした。


「ありがとう、読んでみる」


本を受け取り、他の本を選んでいる間も及川くんは帰らず、むしろこちらをずっと見ているようで、背中がなんだかむず痒かった。

さっさと帰ろう…


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