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君の隣

第1章 平凡ーNONA sideー

「乃南今日これで終わり???」
「うん」
「じゃあさー、駅前に出来たカフェ行かない??? パンケーキがめっちゃ美味しいらしいよ~~」


甘い物に目がない私達。
帰りが一緒になる日はよくカフェに足を運ぶ。


「ごめん杏、今日はバイト行く前に図書館寄りたいんだ」
「好きだねー、そっかー、じゃあまた今度にしよ」


大学の敷地内にある図書館は、私のお気に入りの場所の一つ。
教室のある棟とは別棟の少し離れた場所にあって、自然に囲まれた澄んだ空気の中に圧倒的な存在感を放って佇んでいる。
特に本が好きな訳ではないけれど、この空気感に触れたくて週に一度はここへ通う。


重厚感のある重い扉を開けると、外の喧騒が嘘のように静かな空間に包まれる。
中に入った瞬間につんと鼻に入る本の香りを吸い込むと、あぁ、帰ってきたなぁという気にさえさせてくれる程、私はこの図書館を気に入っている。


さてと…、来週までに提出のレポートを仕上げる為に、参考文献でも探そうかな。
何冊か抱えながら、もう一冊取ろうと棚の最上段に手を伸ばす。
あまり背が高くない私にとって、最上段の棚は背伸びしてやっと届くかどうかというぐらいの高さだ。


「これ???」


右上の方から声がして見上げると、1年もの間遠くから見つめていた彼が横にいた。


「…!!」
「はい、どうぞ???」


いつも遠くから見つめていただけの彼がなぜ真横にいて私に話し掛けてくれているのか、頭をフル回転させるが全く分からない。
驚きのあまり言葉を発する事ができない私に向けられた眩しい笑顔と、くいと右に傾けられた顔。

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