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君の隣

第1章 平凡ーNONA sideー

「あ、ありがとうございます」
「君も、ここ好きなの???」
「えっっ…」


ずっと憧れていた人に話し掛けられている事実に、これは夢なのかと疑ってみたけど、夢では無さそうな訳で。
とりあえず、こんなチャンス二度とないかもしれないと思い慌てて会話を続ける。


「よく来てるよね」
「あっ、はい、ここ、すごく落ち着くんで」
「俺も。 講義の合間によく来るんだよね」


毎日眺めてるのに、知らなかった。
先輩もよく図書館に来てたんだ…。


「私も、講義の合間とか、今はバイトまでの時間潰しで…」
「そうなんだ。 ずっと話し掛けたいと思ってたんだよね、君に」
「えっ…、私に、ですか…???」


私の事を知ってくれていたってだけでも驚きなのに、ずっと話し掛けたいと思ってたって…
そんな事って…


「ずっと機会伺ってたんだ、君と話したくて」
「あ、私も、先輩の事は一年の時から知ってました」
「俺の事、知ってくれてるの!? 嬉しいなぁ」


この学校で先輩の事を知らない人なんているんだろうか。
自分で気付いていないのかな、先輩が歩いていたら周りの女の子がみんな先輩の方を振り向く事。


「あ、でも、先輩は、どうして私の事知ってるんですか???」
「可愛いからね。 ずっと気になってたんだ」
「かっ…!! えっ…」


可愛い!?
私が!?


そこからはもう舞い上がってしまって何を話したかよく覚えていない。
携帯番号交換して、また明日図書館で会う約束をした事だけは覚えている。


遠くから彼を眺めているだけの毎日に何の不満も無かったし、自分から何か行動を起こすつもりも無かった。
でも…、そんな毎日が彼によって変えられようとしている。


その後のカラオケ店でのバイトも今日はなんだか身が入らず、ずっと締まりのない表情で接客してしまった。

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