
4月は君のぬくもり
第2章 彼の秘密
彼は真っ直ぐ私を見つめ、近づいて来た。
「何ですか?先生」
やっぱりぶっきらぼうな物言いで。
私は周りに聞こえないよう小声で話した。
「あの…きのうはほんとにありがとう。まさかあなたがうちの生徒だとは思わなかった」
「別に。たまたまあそこを通りかかっただけだから」
「そうだったの。でも、あんな時間に津田君こそ何してたのよ?」
「俺が何してようが、先生に関係ないじゃないですか」
一瞬彼の目が鋭くなった気がした。
怒った…?
でも私は負けずに言い返す。
「関係なくはないの。私はもうあなたの担任になったんだから。何かあったらいけないでしょう?」
「…あ、そ。じゃ」
「ちょっと…っ!」
彼はそれだけ言い残し、スタスタと教室を出て行った。
そしてその後を、待ちかまえていた女子数名が追いかけて行ったのだった。
