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神様の願い事

第4章 誤解

《sideS》



神様が鏡から飛び出てきた。

鏡に智くんを映して、俺は機嫌良く見ていたというのに。
その智くんを打ち破って神様は飛び出てきた。


翔「最近会ってないからかな? まさかあの人に対してこんな事思うなんて、信じられないよ」


その不可思議な現象について聞こうと思ったのに、それを制して急かすように質問をしてくるから。
だから俺は答えていると言うのに。


「そっか...」


なんて素っ気ないんだ。


翔「ね? だから困ってる訳じゃ無いんだよ。只、今すぐ会わせてくれって神様に祈っちゃったけどね(笑)」

「そっか、そんな祈る程...」

翔「程って言うか、まあ、ついうっかり」


素っ気ないというか、なんだか神様はぼーっとしてる。
俺の顔も見ずに、ベッドに掛けられたシーツの皺を見て、ぼーっとしてるんだ。


翔「だから、俺がつい祈ったから神様は来たのかもね」

「ああ、そうか」


なんで急にトーンダウンしたんだ。
いつものくるくるとしたキュートな瞳も見せてくれないし、さり気なく乗ってくる膝にも、今日はまだ触れてこない。


「僕が変身出来れば良かったのに」

翔「え?」

「だって会いたいんでしょ? 僕神様なのに何も出来なくて...、ごめん」


考えてたのか。
ぼーっとしてたんじゃなくて、呼ばれたのに何も出来ない自分が情けなくなったのか。


翔「神様が謝る事なんて何も無いよ。だって別に困ってないんだから(笑)」

「でも」

翔「それに変身したって仕方ないよ。だって神様はあの人じゃないんだから」

「そう、だよね、ごめん」

翔「いやだから(笑)」


悩みがあるのは神様の方なんじゃないか?
そう思う程に今日の神様はおかしい。


翔「落ち込まないでよ(笑)」


なんだか寂しそうなと言うか。


「落ちこんでる...?」


只でさえ小さいのに、その背をもっと縮こませて小さくなって。


翔「明らかでしょ(笑)」


肩を落とす仕草って、猫でも出来るんだな。

俺の役に立てなくて落ち込むなんて、神様ってなんて愛らしいんだ。


翔「ほら、元気だから。こっちおいで?」



その小さくなった神様を慰めてやりたくて、俺はそっと抱き寄せたんだ。






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