テキストサイズ

神様の願い事

第4章 誤解




「今日はどうしたの?」


まただ。


「何か困ってる事があるんでしょ?」


また引き込まれた。


「どんな事でもいいんだよ? 恥ずかしがらずに言って」


ベッドの上で正座をして固まる翔くんは、大きな目をぱちくりして俺を見る。


翔「か、神様」

「今日こそ呼んだでしょ?」


俺はそんな翔くんに近付こうとぴょこんと跳ねてベッドに飛び移った。


翔「い、いいい今そこから出て」


座る翔くんの目の前にはあの鏡がある。
俺はそこから飛び出てきたんだ。


翔「なな、なんでどうして」

「そんな事はいいから。ほら、何か悩んでるんでしょ?」

翔「だ、だってこの鏡っ。え、ええっ?」

「...もういいんだって」


まあ驚くのも無理は無いけど。
俺だって初めは驚いて思考が追いつかなかったし。


「話進まないから、とりあえず置いといて」

翔「う、うん」


まだ正座をして固まってるけどまあいいか。


「で、何があったの?」

翔「へ?」

「や、だから。何があって僕を呼んだの?」

翔「呼んでないけど...」

「は?」


またか。なんでそうなる。


「いやいや、心のどっかで絶対呼んでるんだって。僕が来たのがその証拠じゃん」

翔「え? あ、そうなの? え、そうなのかな?」

「今何を考えてたの? それを教えて? そうしたら、君が何に悩んでるか分かるかもしれないから」


ピンと来ないきょとん顔の翔くんに聞いてもラチが明かなさそうだ。

それならば、今何を思い、何を考えてたのかを聞けばヒントになると思った。


翔「あ~今は、あの人の事考えてた...」


ほら、やっぱり悩み事なんてそれしか無いんだ。


翔「会いたいなって、あの人に触れたいなって、思ってた...」


そんな事わかってた。

そんな事くらい簡単に予想はついて、翔くんの口からそんな言葉が出てくる事も予測はしていたのに。


「うん...」


だから、何か気の利いた言葉を用意しておくべきだった。


用意してなくても予測はしていたのだから、なんだかんだと俺の口から言葉が出ると考えていたのが甘かったんだ。


自分が口ベタなんてわかりきってた事じゃないか。


言葉が詰まる事に驚くなんておかしな話だ。



だって口ベタの俺には、当たり前の事なんだから。







ストーリーメニュー

TOPTOPへ