テキストサイズ

神様の願い事

第4章 誤解



“たまたま”そこに居ただけの俺を抱きしめ、翔くんは深い息を吐く。

深い息を吐いて、もう一度ぎゅっと抱きしめ直してまたふんわりと呼吸をする。


翔「これ、落ち着くな...」

智「うん...」


ソファーに座ったまま、何故か男2人で抱きしめ合うというこの不思議。


翔「...智くんも?」

智「ん」

翔「ふふ、そっか」


その不思議さに、翔くんの背に回した腕を外せないでいる。


智「なんでだろ」

翔「うん?」

智「編集長の時は気持ち悪くて、悪寒がしたくらいなのに」

翔「ははっ、そうなんだ?」

智「うん。編集長の事、嫌いじゃないんだけどな。結構楽しい人だし」

翔「なのに悪寒?」

智「今は全くしないのに、おかしいよね?」


回した腕を外せないのは俺だけじゃなく、翔くんもだ。
なのに話す会話は普段と変わらないトーンで。


智「やっぱ、ずっと一緒にいるからかな...」

翔「え?」

智「慣れてるだけなのかもね。翔くんと触れ合う事に」


そう考えないと辻褄が合わなかった。
編集長に拒否反応を示したのは、俺がノーマルだから。
翔くんに拒否反応を示さないのは、慣れた仲間だから。


翔「触れ合う事に慣れてる...?」

智「だから翔くんも嫌な感じしないんじゃない? 俺が相手じゃ実験にならなかったね(笑)」


だからいつもの調子で笑いながら翔くんの顔を見た。


智「...なんでそんな変な顔してんだよ(笑)」


すると少し困ったような顔をして。


智「だから、俺に言えばいいよ」

翔「え?」

智「皆に甘えられないんだったら俺にすればいいでしょ? いつでも甘やかしてあげるよ?」

翔「はい?」

智「翔くんにはいつも世話になってるからね。俺だってたまには役に立ちたいんだよ」


寂しいなら俺に言えばいい。好きな人の代わりにはならないだろうけど。


翔「...甘えていいの?」

智「もちろんだよ(笑)」


大きな目をくるくるさせて見るんだ。
それはまるで子供のようで可愛くって。


智「遠慮しなくていいよ。チューまでした仲じゃん」

翔「ちゅ、チューって」

智「だってそうじゃん」

翔「まぁ、ね(笑)」


だから俺に言えばいい。



抱き締めるくらいなら、いつでもやってやるんだから。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ