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神様の願い事

第4章 誤解

《sideO》



どうして俺は翔くんに首を擽られているのか。


翔「どんな感じ...?」


どんな感じもクソも。


智「っ、ふ...」


抑えた息を漏らさないように堪えるので必死だ。


翔「嫌な感じ、しない...?」


話しながら首に顔を埋めるもんだから、その暖かい息が首元を擽るんだ。


智「それは無いけど、擽ったい...」

翔「じゃあ、これも大丈夫?」

智「っ、ぁ」


思わず息が漏れた。

だってその生暖かい感触は、翔くんの舌に違いない。


智「ちょ、ま...っ」


首に柔らかく吸い付く唇と、優しく這わせる熱い舌。


翔「嫌...?」


どうして俺に聞く。


智「しょ...、くんは? 嫌じゃ無いの...?」

翔「俺? 俺は」


翔くんはどうしてこんな事をしているのか。
俺は男だぞ。


翔「まだよくわかんないけど、嫌な感じは無いよ...?」


だからどうしてそんな事を言うんだ。
だって翔くんは。


智「好きな人、いるんじゃないの? なのに俺にこんな...」

翔「好きな人...?」


あんなに悩んでたのに。
あ、まさか悩みすぎておかしくなったとか。


翔「...そんなの、智くんに言った?」

智「あ、や、聞いてなかったっけ…?」


そうか。俺は知らないんだ。
相談を受けたのは神様だった。ややこしいなちきしょう。


智「なんかそんな感じがして...。ほら、最近悩んでるっぽかったから」


“そっか”と翔くんは笑ったけど、好きな人がいるのかという質問には答えてくれなかった。
ふふっと笑ってその話はそこで終わりなんだ。


翔「...抱き締めていい?」

智「え...? うん、いいけど…」


答えてくれない。教えてくれないんだ。
神様には相談するのに俺には言わない。


智「ん、ふ...」

翔「はぁ、気持ちいい...」


渾身の力で俺を抱き締める翔くんは、安堵の溜息を吐いて。


翔「智くんも、気持ちいい?」

智「ん、あったかい…」


子供のような笑顔で俺を覗き込む。


翔「ふふ、本当だ。あったかいね...」


そういえば甘えたいと言っていた。

とすると、これは翔くんの“甘え”なのか。

色々悩んでるようだし寂しそうだし、誰かに癒されたいんだきっと。



そこにたまたま、俺が居ただけという事だ。



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