
神様の願い事
第5章 混乱
俺の頭を撫でて、甘い声を聞かせる。
その状況に思わず錯覚を起こしかけたその時、楽屋のドアが開いた。
雅「...なにしてんの?」
翔「あ」
俺は智くんの胸に包まれてて、そこから伸びた俺の手は、智くんの後頭部を掴んでいた。
翔「なな何もっ」
雅「いやそれ」
智くんの後頭部に手を伸ばしたんだ。
そっと添えると、ニッコリ笑う智くんと目が合って。
俺は首を伸ばして智くんとの距離を詰めた。
雅「キスしようとしてなかった?」
明らかにキスをする態勢だった。
翔「はぁっ? な、何言っちゃってんのっ」
俺はこんなに動揺していると言うのに、この人はまったくの素で。
智「キスぅ? ふふ、おはよ」
雅「あ、おはよ」
俺を撫でている手は離したものの、未だぴったりとくっついているし。
雅「どしたのリーダー。いつにも増してふにゃふにゃだね?」
智「そう?」
雅「うん。ふにゃふにゃって言うか、へろへろって言うか」
確かに。ふにゃふにゃだしへろへろだ。
智「なんか、いい匂いすんだよね」
雅「へ?」
智「翔くん。ここらへんがさ...」
“この辺り”だと、智くんは俺の胸に鼻を擦り付けた。
雅「ここ?」
智「うん。するでしょ?」
それに習って、何故か相葉くんまで俺に鼻を擦り付ける。
翔「うひゃひゃっ、く、擽った」
二人で俺の胸に鼻を押し付けクンクンと匂いを嗅ぐ。
周りから見たら明らかに変態だ。
智「ね?」
雅「うん...? 別に、何もしないけど」
智「ええ? うそだよ。ほらここだよ? 絶対するじゃん」
翔「ちょ、だからさと...っ、うひゃひゃっ」
変わった香水なんてつけてない。
相葉くんだって何も匂わないと言うのに。
智「はぁ... 気持ちいい...」
大きく鼻で香りをを吸い込んで、ふぅっと大きく息を吐く。
その目はとろんとしていて。
雅「んん?」
その様子を見た相葉くんは不思議そうに俺の胸に鼻を擦り付けたけど、やっぱりよく分からないみたいだし。
智「ふふ、離れるの勿体ないな」
相葉くんが居るというのに、そんな事を躊躇いも無く言うんだ。
そんな事を言うと俺が動揺すると知っているのに。
わざと混乱させる。
この人の心は、俺なんかじゃ全く読めないんだ。
