テキストサイズ

神様の願い事

第1章 不思議な噂

《sideA》




雅「なんだアレ…」



廃れた商店街の細い路地裏が淡い光を放つ。

その光は次第に強くなり、目映く輝く。


雅「何かあるのかな…」


思わず独り言が出る。
怖い気持ちより興味が勝った。

俺は、その路地裏へ忍び寄る。


雅「あの~、誰かいるんですか…?」


眩しい光は段々と淡くなり、目を細めなくても景色が見える様になった。
その消えてしまいそうな光の奥に、何やら漂う影が見えた。


「僕に何か用?」

雅「えっ」


その光は声を放つ。
柔らかで、甘くて不思議な声。


「君じゃ無いの? 僕を呼んだの」

雅「はっ?」

「僕に会いたかったんでしょ?」

雅「ま、まさか君が…?」


淡い光は弱くなる。
すっと消えてしまったその光から、声の主は漸く姿を現した。


「ん~っ」


その声の主は身体をプルプルと震わせ伸びをした。
それもとても気持ち良さそうに。


雅「え」

「なんだよ」

雅「え、だって。え」

「だからなに」


目をゴシゴシと擦った。
何度も、何度も瞬きをしては擦ったんだ。
だけど何度目を開いても、目の前の景色は変わらなかった。


雅「まさかとは思うんだけど」

「うん」

雅「君が、神様?」

「そうだよ?」


俺は神様に会いたかったんだ。

どんな願いも叶えてくれると言う神様に。


雅「で、でもその姿」

「信じないの?」

雅「いやっ、そう言う訳じゃないけど」

「この姿で話せるんだよ? どう見たって神様でしょ」


その神様は不思議なんだと聞いた。

あまり話すとお願いの効果が消えちゃうからと、詳しい事は聞かなかった。

只、不思議なんだと。

とても不思議で可愛い神様なんだとだけ、聞いたんだ。


「君のお願い、聞いてあげるよ?」


俺はその可愛くて不思議な神様に、そっとスルメを差し出した。


「またぁ? この間もスルメだったんだよね…」


いい加減飽きちゃったよ、とかなんとか言いながらもスルメを頬張る。




俺はその不思議な光景を目の前に、願いを口にしたんだ。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ