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神様の願い事

第9章 ねこのきもち




智「俺は、そんな簡単な意味じゃ無いんだよ」


うっとりとキスをする智くんは、いつしか俺の首に腕を回していた。


智「そんな簡単に、言えない」


俺の後頭部を掴む手にも力が篭もり、顔を傾ける合間に言葉を繰り出す。


智「翔くんが思ってる程、軽く無いんだから...」


俺を“受け入れてる”と言うよりは、智くんからぶつかって来ているようなキスをして。


智「それを聞く覚悟、本当に出来てるの...?」


急に止めたかと思えば、鼻の擦れる距離で俺の瞳を覗いた。


翔「もちろん」

智「後悔、しない?」

翔「後悔なんて、聞かない方がするよ」


意を決したのか、一息呼吸をついて。


智「好きだよ」


ボソッと、呟くように声を出した。


智「皆とは違う特別な意味で、好きだよ...」

翔「...っ」


俺の目を真っ直ぐ見て、逸らさない。
いつも、逸らして隠してばかりだったのに。


翔「俺も、智くんの事は特別だよ...」

智「俺と同じ、特別な好きって事...?」


“好きだよ”その破壊力やなんたるや。


翔「そうだよ、貴方の事が、大好きなんだから...」


智くんの心臓の音に“正直だな”なんて笑っていたのに。


智「翔くんも、心臓止まったよね?」

翔「っ、仕方無いでしょ...」


貴方から出る“好き”に、こんな威力があるなんて思わなかったんだ。


智「俺もちゃんと言ったから」

翔「うん」

智「だから、もっかい...」

翔「もっかい?」

智「...鈍いな」

翔「え」

智「キスだよ、して」


“して”と言った割には待ち構えもせず、智くんから唇を寄せてくる。


智「翔くん...」


こうなる事を願っていたんだと、その熱いキスで俺に伝える。


翔「嬉しいよ、幸せだよ、智くん」

智「ん、俺も...」


ようやく叶った願いに、二人で喜びを噛み締めて。


翔「猫化もこれで、治るね」

智「うん」


“猫化”なんて大問題も、こんなに簡単に治るなんて俺達馬鹿だね、なんて笑い合った。

皆も俺の背を押してくれていたし、この関係も問題無いどころかきっと喜んでくれるだろうし。



これで俺達は晴れて、“恋人”の関係となったんだ。





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