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神様の願い事

第10章 恋人の定義

《sideO》



ガチャガチャ


智「あれ、外れねぇな」


なんだよ、結構簡単だったな。俺の“本当のシアワセ”ってやつ。


翔「何やってるの?」

智「や、コレもう捨てれるかなと思ったんだけど」

翔「外れないの?」

智「うん...」


“本当のシアワセ”を手に入れた俺は、この面倒臭い鏡を捨ててやろうと思った。
だけど翔くんの寝室に飾ってある鏡はビクともせず。


智「おかしいな…」

翔「そのうち外れるんじゃない?」

智「そうだね」


まぁでも翔くんの言うようにそのうち、ポロッと剥がれる時が来るんだろうとあまり気に止めなかった。


翔「で、一旦帰るの?」

智「と思ったんだけど、帰れない」

翔「へ?」

智「鍵が無いの」


確かニノが鍵を掛けていたんだ。
でも俺は鍵を持っていない、と言うか、何も持っていない。
だって服すら無いんだから。


翔「あ、ニノかな?」

智「たぶんね」


じゃあ今日はここから行こうと言う翔くんの言葉に甘え、シャワーをして服を借りた。


翔「準備あるって言ってたけどいいの?」

智「別にそんなモン無いよ」

翔「え?」

智「...逃げようと思っただけ。翔くん怖かったから」

翔「やっぱり嘘だったんだ」

智「ふふ、うん」


のどかだな。
仕事に向かう車窓から見える景色さえも、キラキラしてる。


智「眩しいな...」

翔「ふふ、眠いの? いいよ寝てて、早起きだったしね」


ああそうか。
翔くんが優しい声で話すからかな。
横目でチラッと見る眼差しも、凄く優しいんだろうなって気配でわかる。


智「じゃあお言葉に甘えて」


翔くんだって早かったのに。
だけどその優しい眼差しが少し恥ずかしくて、だから俺は目を閉じて誤魔化した。


翔「まるで日向ぼっこだな…(笑)」


優しい声と、優しい日差し。

それを浴びて、俺は少しの眠りにつく。


翔「って、え」


聞き慣れている声なのに、こんなにも楽しくて嬉しくて。


翔「ちょ、ちょっとちょっと」


焦る声だって、聞くだけでどんな顔をしてるのかわかるくらいだし。


翔「嘘でしょ、おいっ、智くんてばっ」



それにしたって騒がしいな。


一体何が起きたというんだ。





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