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神様の願い事

第12章 “好き”の向こう

《sideO》



「そろそろ死にそうじゃ」

智「へ」


ちょこちょこと元の時代に戻ってはこうやって報告をする。
そのじいちゃんが、今日は少し重い空気で話し出した。


智「あ、じいちゃんの好きな人?」

「そう」


ふぅっと溜息を吐くじいちゃんは、悲しそうという訳では無く。


「いやぁ、困ったぞぅ…」


何やら困っていた。


智「早く迎えに行ってあげれば? 待ってるんでしょ?」

「そうする為には早く猫化を治さんと」

智「だからなんで俺」


なんだか俺が関係しているような口振りで。
確かに治してもらわないと俺も困るんだけど。


智「先に迎えに行ってさ、あとで治しに戻って来てよ」


じいちゃんの話からすると、その人物は賢そうだったし。
じいちゃんが忘れたと言った呪いの解き方だってその人に教えてもらえばなんとかなるんじゃないかと提案したのに。


「それは無理じゃ」

智「どうして? 賢いんでしょその人」

「や、そうじゃなくてだな…」


唸るような声で重い口を開いた。


「ぜえぇぇったい、怒られるよ…」


頭を抱える姿が思い浮かぶ。


智「は?」

「いやマジで。これは怒られるわ」

智「え、なんで? 好きなんでしょ? じいちゃんの事」

「それは絶対そうなんじゃけど」

智「だったら、やっと会えて感動するんじゃないの?」

「だけどコレがバレたら絶対お説教だよ…」


俺の猫化がバレると怒られるんだとじいちゃんは言うんだ。
まぁ、真面目そうな人だし人の人生を狂わせ兼ねない行動に怒るのも無理は無いかもしれない。


「『はぁぁぁ、猫化ぁ!? なっにやってんだよ!』って絶対言われるし」


思ったより怖い人なのかな。


「『猫になっちゃったら、どうやって愛し合うんだよっ!』って、ブチギレされそう」


他人の事をそれ程考えてくれるってのは、やっぱり優しい証拠か。


「んで結局、『俺達は時空が変わっても結ばれない運命だったんだね』とか言って拗ねんだよゼッタイ」

智「へ」


“俺達”とじいちゃんは言ったけど、それはじいちゃん達の事で。

だけど猫化に直面しているのは俺で。


「マジでお前早く治れって」

智「は?」


自分のミスを棚に上げ、全て俺のせいだと言い出すけど。


なんだか知っている人のような。そんな気がした。




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