神様の願い事
第12章 “好き”の向こう
智『気付いたんだよね』
翔『何に…?』
智『未練があるって事に』
どうしても昇れないんだ。
天に昇って翔くんを見守ってやろうと思ったのにどうしても。
智『未練があるから天の入口を開けないんだって事に、気付いた…』
俺が思ってしまったこと。
“この人ともっと楽しく過ごせてたら”
智『正直に生きておけばよかったのにって…』
翔『智くん…』
後悔なんてしても仕方ないと思ってた。
今までだってそう思いながら過ごしてきたし、過ぎたことは仕方ないと思いながら生きてきた。
だけどこれだけは。
智『譲れなかったんだな、きっと』
だから俺は時空を遡る事にした。
この時代に俺は居ないんだから、願いを託すは若い俺だと。
翔『それで、どう…?』
智『ん?』
翔『今は、成仏出来そうなの…?』
智『ふふっ』
なかなか素直にならない若い俺には手を焼いたけど。
翔くんも見ただろ。あの嬉しそうな顔。
智『できるよ』
翔『そう…?』
智『だって俺の願いは叶ったよ』
翔『さっきの俺達?』
智『ふふ、幸せそうだったでしょ』
翔『うん』
俺の無念を若い俺が晴らしてくれた。
その幸せそうな顔を見てるだけで、俺も幸せで。
智『翔くんに愛されるって、すげぇんだなと思ったよ(笑)』
翔『ええ?』
智『だって見た? 俺すっごいデレてた(笑)』
翔『ははっ、確かにあんな顔見た事無いかも』
智『でしょ?(笑)』
過去の俺達が幸せになったところで俺達は変わらないのかもしれないけど。
智『いい経験できたなぁ…』
翔『貴方の過去じゃないでしょ?』
智『ん、だけど。アイツら見てるときゅんきゅんして楽しかった』
翔『ははっ、そうなの?』
智『ん。翔くんと恋愛してる気分だったよ』
翔『マジで?(笑)』
だけど今、俺は翔くんと共に天に昇れてしまうし。
翔『ずっるいよそれ』
智『ん?』
翔『俺もしたかったよ。智くんと恋愛』
智『ふふっ』
なら、今からしようよ。
天に昇って温かい陽の中で、二人で恋愛しよう。