神様の願い事
第12章 “好き”の向こう
翔『俺が、迎えに来てなんて言ったから…?』
成仏出来ていないと言う俺に、翔くんは悲しそうな顔を見せた。
智『違うよ』
自分のせいでオバケになってしまったのかと申し訳なさそうな顔をするんだ。
智『俺がね、離れたくなかったんだ』
だけどどんなに翔くんの周りを彷徨いても俺は空気と同じで。
智『だけどね、思うようになったんだ』
翔『なにを…?』
智『やっぱり俺は死んじゃってて』
翔『ん…』
智『ここにいたって何もならないんだなって』
翔くんに相手にされない事がこんなに苦しいなんて初めて知ったんだ。
まぁ辛くて寂しくて。
智『悪いオバケになって取り憑く前に成仏しようと思って』
だけど一度天に昇るチャンスを棒にふった俺はなかなか昇れなかった。
なんの試練なのか昇ろうとする俺に妨害が次々と襲ってきた。
智『なのにさぁ。翔くんがへっぽこだから』
翔『はい?』
悲しみに暮れる翔くんは友人にお茶でもしようと誘われた。
その友人は外人の夫がいるセレブ妻で。
智『駄目だよあんなの。俺が写真真っ白にしたからよかったけど、あんなのスッパ抜かれたら終わってたかんね?』
翔『え』
智『高級フレンチで手、握りながら話してる姿なんてさぁ。“櫻井翔略奪愛か!?”とか絶対書かれてるし』
翔『え、あれ!?』
智『俺のお陰だからね』
翔『撮られた筈なのに記事にならなくておかしいと思ってたんだよ…』
智『感謝してよね』
バツの悪そうな顔をして小さくなった。
智『他にもあるよ?』
翔『えっ』
智『インチキ占い師に変な壺買わされかけてたでしょ』
翔『ハッ』
智『寂しいからペット買うとか言い出したり』
翔『あっ! なんか売ってくれなかったんだよっ欲しいって言ってるのに!』
智『だって育てられないじゃん』
翔『そっ、育てられるよ』
智『だめ。翔くんに生き物は無理』
翔『くっ』
ゴルフボール大だった翔くんはとうとうピンポン玉程の大きさになって。
智『そんな姿見せられたら…』
翔『やっぱ俺のせい…』
智『じゃなくて』
面白くて。
智『可愛いなぁって』
もっと見てたかった。
智『好きだなぁって、思った…』
この人と楽しい時間を過ごせたらどんなによかっただろうと、思ってしまったんだ。