テキストサイズ

神様の願い事

第13章 神様の願い事

《side爺》



翔『智くぅぅぅん…』


項垂れる翔くんが戻ってきた。


智『どうしたの?』

翔『衝撃的な告知を受けたんだよ…』


“神”のお告げとやらを受けた翔くんは情けない顔をしている。


翔『こんなのって無いよ…。せっかく、智くんと』

智『あ、次俺だ』


話の途中で脳にこだまする“神”の声。
早く来なさいと俺を呼んでいた。


智『…行ってくるね?』

翔『うん…』


縋るように俺の手を握っていた翔くんを離し、俺は静かに神の元へと向かった。







“分かっているでしょうが貴方は天界に昇る事を躊躇いました”

智『あ、はい』

“しかも元の時代に戻れずこちらの天界に来るという失敗を犯しました”

智『鏡を先に消しちゃって…』

“前世で貴方は人々に沢山の笑顔を与えました”

智『あ、まぁ…(笑)』

“人々の幸せに大変貢献したという意味で転生を受けられるのですが、なにせこの時代には若い貴方がいます”

智『ですね』

“同じ時代に同じ魂をふたつと降ろす訳にもいかず…”

智『じゃあこのままずっとここに?』

“ですが天界はもうパンパンです”

智『あ、そっか』

“ですから貴方には転生を受けてもらいます”

智『え、生まれ変われるんだ』

“希望はありますか?”

智『人間』

“そう言うとは思っていましたが…”


流暢に話していた神が途端に沈黙をキメた。


“仕方がありませんね。どのようにしても不満は出るでしょうから転生先はこちらで決めます”

智『え』

“その時が来るまで、思い残す事の無いよう天界を楽しみなさい”

智『あ、ありがとうございます…』


思い残す事の無いよう、と言われたけど。

俺は充分満足していた。


翔『あっ智くん』

智『ふふ』

翔『どうだった? 俺と同じだった?』

智『んー、よくわかんない』

翔『えぇ?』


本当に充分なんだよ。


智『どうなるかはわかんないけど』


こんなに近くで触れ合えて。


智『でも幸せだよ』


こんなに近くで愛を叫べる。


智『ありがとう翔くん。愛してるよ…』


俺の最期に言えなかったこの言葉。


智『生まれ変わっても、忘れないから』


はっきりと言える。


俺の気持ちが伝わった、それだけで。


もう思い残す事は無いよ。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ