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神様の願い事

第2章 秘密




翔「噂なんて関係ないよ」

「え?」

翔「万が一変な噂が出たとして、あの人がそれを信じるなんて考えられないから」

「そう、なの...?」

翔「そういう人なんだよ。俺の言う事は信じてくれるけどね(笑)」


その人を思い浮かべてるのか、翔くんは少し笑った。


「信頼してるんだね」

翔「当たり前だよ」


何を言ってるの、そんなの当たり前でしょうとでも言う程に、翔くんは自信たっぷりに話した。

それでクスッと笑って、膝に乗る俺の額を指で撫でるんだ。


翔「ん...?」


指を止めて、眉をひそめて。
俺の顔を覗くと一言呟いた。


翔「タンコブ出来てる?」

「あ」

翔「ははっ、また酒でも呑んでフラフラしてたんだろ」

「ま、そんなトコかな」

翔「全くしょうがないな。怪我もしてんじゃん」

「ちょっとだけだよ」


バレるかな、大丈夫かな、なんて焦って受け答えをしている俺を、翔くんは掴んで顔を覗く。


翔「ほら、じっとして」


まじまじと見つめるその瞳を逸らしたくて、顔を背けようとしたけど。


翔「動いちゃ駄目だって」


小さな顔は、翔くんの片手にすっぽり収まるし、逃れようとしたって身動きも取れなかった。


翔「よし、できた」


ペタッと貼られた絆創膏。

ツヤツヤの毛並みからは浮き上がってすぐに剥がれそうだけど。


翔「ちっこいくせに酒なんて呑むから」


だけど少し擽ったかった。

只の絆創膏なのに、何故かその部分はじんわりと温かくなって。


「ごめん...」

翔「ありがとうでしょ」


うっかり俺を出してしまった。

俺の軽率な行動のせいで、翔くんから笑顔が消えるんじゃないかと。

不安で、心配で。


「ふふっ、ありがと...」

翔「うん(笑)」


俺は、この笑顔を見ていたい。


「ちゃんと、応援するから」

翔「恋の?」

「そうだよ」

翔「神様のくせに応援かよ(笑)」




この笑顔を、守りたいんだ。







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