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神様の願い事

第3章 変化

《sideS》



ウルトラマンかよ。


神様の身体が淡く光り始めたなと思ったら『あ、時間だ』とかなんとか言って急に消えた。

消えたというよりは、俺を置き去りにして猛ダッシュしたんだけど。

商店街の角を曲がったなと思ったら、そこから目映い程の強い光が見えて。

なんだなんだと覗きに行ったら神様は忽然と姿を消していた。


翔「やっぱ神様なんだ...」


野良猫じゃないのか。
急に目の前に現われて、急に光を纏って消える。


翔「つか、神様って何?」


現れたり消えたり、この世の物体じゃないんだろうか。
そう思うと、なんだか怖い気もしてきた。


翔「は、早くかえろっ...」


薄暗く、廃れた商店街。
こんなところに神様なんて似つかわしく無いにも程がある。


翔「ひょっとしてオバケ...」


やべえ。鳥肌が立ってきた。


翔「ううわっ」


急に俺の隣に人影が見えた。
俺の叫びは商店街に響く。


翔「あ...? なんだ、鏡かよ。驚かすんじゃねえよ全く...」


こんなところに馬鹿デカい姿見とは。
その古そうな趣に、俺は更に震えを覚えた。


「ちょいと兄ちゃん」

翔「はいいいっ!?」


びっくりした。
俺のキュートな撫で肩がいかり肩になるところだったじゃねえか。


「鏡、いらんかの?」


俺の背後から声を掛けたのは、おじいさんだった。
さっきまで誰も居なかった筈なのに、急に背後に現われたんだ。


翔「や、それはちょっと...」


まさかあの馬鹿デカい鏡の事か。
くそデカいうえに古くさくて、なんならちょっと怖い感じもする。
中からお化けだって出てくるかもしれない。


翔「ハッ、まさか...!」

「ワシがお化けに見えるか?」


足は...。あるわ。


「本当にお前さんは、ビビりじゃの」


ふぉっふぉっふぉと笑うおじいさんは、どこか懐かしむように俺を見た。

本当に、なんて。
今初めて会ったのにまるで昔から知っていたとでも言うように話すんだ。


「鏡、いらんかの?」


こんな廃れた商店街で、こんな夜中に。

売れる訳なんて無いのに鏡を売り始めて。


翔「い、いりません」

「えええ...」



しょんぼりするその姿は、どこか見た事があるように思えた。






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