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teardrop

第1章 1滴

『…暗い…ここはどこ?』

透花は暗闇の中にいた。

その場所はとても闇が深くて暗い場所。

右も左もわからない闇の中を歩いてくと、何かの気配を感じる。

その方向もまた、闇。

けれど透花は闇の中の気配をジーッと見る。

するとぼんやりと幼い少女の姿が見えた。

闇の中に小さくうずくまるように膝を曲げて座ってる。

顔は膝に伏せていて見えない。

歳は4歳くらいだろうか?

「ねぇ…?」

透花は声をかけてみた。

けれど、返事はない。

『…寝てるのかな?』

耳を澄ましても、辺りは静かで寝息らしきものは聞こえない。

死んでいるとは思わないが、まるで少女に生気がないようにも感じる。

透花はもう少し近づいてみようと思った。

その時、頭の中に響くような声を聞く。

「そっちに行ったらダメ!」

咄嗟に振り返ったが、声の主はどこにも見当たらない。

『誰?』

透花は辺りを見渡した。

また声が響く。

「ほら、あの子をよーく見て」

姿が見えない声に誘われるように少女の方を再び見る。

さっきまでは見えてなかったけれど、少女の横にもう一人の人影がある事に気付く。

『ああ…誰かと一緒なんだ…あの子の親かな?』

そう思った次の瞬間、少女の横にいる人影の姿を見て透花は一瞬で全身が凍りつく。

『……っ!!』

その姿はまるで死神。

ボロボロのローブのような布を羽織っていて大きな鎌を持っている。

鎌の刃先が一瞬、光ったように見えた。

後ずさりする足が、何かに囚われたように重い。

『どうしよう…早くここから逃げなきゃ!…けど、この闇の中をどこへ逃げたらいいの?』

「こっち!こっちだよ!急いで!」

さっきの声が響く。

突然、闇の中に浮かび上がった左腕が見えた。

その手は透花へと差し伸べられている。

「さあ!早くっ!」

透花は手を伸ばす。

指先が触れ合う。

すると、謎の手に透花は手を引かれ、闇の底から引き上げられていった。

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