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果てない空の向こう側【ARS】

第8章 握る(雅紀)

ミッチャンを家まで送って行く途中、ミッチャンはぽつりとつぶやいた。

ミ「雅紀くん、本当に結婚してくれるの? 本当にいやじゃない?」

雅「何言ってんだよ! いやな訳ないじゃん! 俺、男だよ? やるときはやるよ?」

ミ「うん…。」

ミッチャンは、何だか浮かない顔をしてた。

結婚が決まって(ミッチャンのご両親にはこれからだけど)、ふたりの赤ちゃんまでできたのに、なんでそんなに暗いのかな?

マタニティブルーってやつ?

マタニティブルーって、妊娠早々なるものなのかな。

気持ちも体も不安定なミッチャンのこと、俺がしっかり守らなくちゃ。

俺は、ミッチャンの手を握った。

ミッチャンは、少し驚いた顔をして俺を見上げた。

そして、俺の手をキュッと握り返した。

好きだ、ミッチャン。

高校から付き合い出して、もうかなり長く一緒にいる、空気みたいな存在。

俺は手をつないだまま、二人で歩いてミッチャンを家まで送った。




雅「ただいま〜」

智「雅紀、来い!」

俺は帰るなり、智兄にえり首つかまれて、智兄の部屋に連れ込まれ正座をさせられた。

智兄は、父さんが死んでからずっと俺たち兄弟の父親代わりだ。

智兄の顔からいつものふにゃふにゃが消えていた。

目の奥が鋭く光っている。

これは、まずいやつかも…!

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