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果てない空の向こう側【ARS】

第8章 握る(雅紀)

智「おめぇ、どういう訳だ?」

雅「え、は、えっと…。」

俺がくちごもったのがカンにさわったのか、智兄はかたわらにあった椅子を蹴り倒した。

智「おめぇ、人様の娘さん傷物にして、何へらへら笑ってんだ!」

雅「き、傷物なんて! 俺たちは真面目に付き合ってるし、愛し合ってんだよ!」

智「じゃあ何で、ミッチャンの体を守ってやらなかったんだよ! どうせ、興奮して理性失って猿みたいに飛びついたんだろ!」

雅「うっ…!」

図星だった。

グウの音も出なかった。

智「雅紀、惚れた女はきちんと守れ。 それが男ってもんよ。」

智兄はそう言って、俺の肩をポンポンとたたいた。

雅「智兄…。」

智兄には、もう何年も彼女はいない。

何年どころか、美大を卒業してから女の話を聞いたことがない。

女を守ってるところなんか、見たことない。

雅「……。」

目の前で、『いいこと言うだろう?』とドヤ顔している智兄に突っ込むこともできず、俺はトボトボと自室に戻った。

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