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果てない空の向こう側【ARS】

第11章 果てない空の向こう側(智)

俺は引き出しから今しまったばかりのエアメールを取り出した。

ペーパーナイフでそっと封を開けると、毎度同じ便箋に書かれた手紙と、写真が2枚入っていた。

写真の1枚は、海辺に沈む夕日の写真だった。
オリーブの枝が、夕日の逆光で美しいシルエットを描いていた。

俺はしばらくその青いインクで書かれた手紙と写真をながめると、もとの封筒にそれらを戻した。

机の引き出しを開けると、その中は赤と青の縁取り模様の封筒でいっぱいだった。

俺は手元の封筒もそこにしまうと、引き出しをそっと閉じた。

窓から差し込む陽は西に傾き、空をオレンジやピンクに染めていた。

智「スペインみたいだな。」

俺は訪れたことのないスペインを、四角く切り取られた東京の空に思い描いた。

階下に下りると、リビングのソファで和也とリリーちゃんが二人で一冊の本をのぞき込んでいた。

智「いらっしゃい。」

俺が声をかけると、リリーちゃんが顔を上げた。

リリー「あ、智兄さん、こんちわ。」

リリーちゃんは、白い歯をキラリと光らせて笑った。

リリー「智兄さんも見てよ、私の新作。」

リリーちゃんは、和也から本を取り上げて俺に差し出した。

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