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果てない空の向こう側【ARS】

第11章 果てない空の向こう側(智)

和「おい、リリー。智兄は、美大でデッサンみっちりやってたんだ。俺なんかよりずっと絵が上手いんだぜ。」

リリーちゃんは、クルリと目を見開いた。

リリー「智兄さん、そうなの? すごい!」

智「和也、余計なこと言うなよ。」

俺はリリーちゃんの隣に腰掛けると、手渡された本を開いた。

その本は、リリーちゃんの高校の漫研の季刊誌で、部員の描いた漫画やイラストが載せられていた。

どれもこれも微妙なデッサンで、美男美女の顔ばかりが描かれていた。

しばらくページをめくると、ひときわ絵のひどい漫画があらわれた。

リリー「これ、私の作品!」

俺は和也と目を合わせると、二人で苦笑いした。

リリーちゃんの作品は、ファンタジーだった。

五人の兄弟が力を合わせて悪魔から村の秘宝を取り戻す話だった。

手先の器用な長男が道具を作り、

賢い二男が作戦を立てる、

力の強い三男が荷物を背負い、

妖艶な四男が悪魔を翻弄し、

行動力のある五男が悪魔に斬り込んでいく。

最後は、村に伝わる魔よけの歌を五人で歌い悪魔を消し去る、というものだった。

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