テキストサイズ

果てない空の向こう側【ARS】

第11章 果てない空の向こう側(智)

智「………。」

リリー「ね、どう? 私の漫画。」

俺は言葉が出なかった。

めちゃくちゃ下手くそな絵と、甘い描きわけの登場人物。

お決まりの勧善懲悪で先の読めるストーリー。

それに…。

智「リリーちゃん、この本、しばらく借りてもいいか?」

リリー「いいよ。その本、カズ先生にあげるために持ってきたから。」

智「そか、サンキュ。」

和「リリー、俺の新作のネームあるけど見るか?」

リリー「やった! 見る見る!」

和「じゃ、俺の部屋に来いよ。」

二人は連れ立ってリビングを出て行った。

智「部屋でエロいことすんなよ!」

俺は二人の後ろ姿に声を投げると、ソファに寝転んでリリーちゃんの本を広げた。

リリーちゃんの漫画は、引き込まれた。

つたない表現力だけど、「描きたい」という意欲にあふれていた。

登場人物一人一人を、リリーちゃんが愛していることがひしひしと伝わった。

リリーちゃんの漫画はキラキラしていた。

リリーちゃんの作品だけじゃない。

本に載っているすべての作品が、若いエネルギーにあふれた輝いた作品だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ