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方位磁石の指す方向。

第6章 scene 5.5






だから大切にしたいって
思う。

誰よりも大切にしてあげたいし、
して欲しいって気持ちもある。

だけど。


智はいつもなにを考えているのか
よくわからない。


メロンパン食べたい。って
言ったから買ってきたのに。

「え、俺カレーパンがよかった。」

ってよくわかんないことを言う。

だから今度はカレーパンを
買ってきたのに。

「あ、メロンパンでいいよ。
だって食べたかったし。」



…よくわからない。


でも、そんなところも
すごい可愛いし、
なんか許せるんだよな。


「智、なんか食べたいものある?」

「俺 、なんでもいいかなぁ。
あ、でも、強いていうなら
あったかいものがいいなぁ。」

「おっけ。
じゃあ、カフェにでも入る?」

「んー。」


数歩先に歩く智の左手を
ぎゅっと握り締めた。


「っ、雅紀?」

「こうすれば、
あったかいでしょ?」


智の左手を俺のコートのポケットん中に
押し込んだ。

もちろん、手は握ったまま。


「…うん、
あったかいねぇ。」


なんて幸せそうに言うから。

こっちまで幸せになる。

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