方位磁石の指す方向。
第6章 scene 5.5
雅紀マジックを見せたところで、
智がふうっと一息。
「最近さぁ、息が白くなるんだよね。
雅紀もなるでしょ?」
「朝とか夕方はね。
でも昼間は結構あったかくない?
だから平気〜」
「えー、すげぇなぁ。
俺、寒くて教室の机こたつに
したいくらいなんだけど?」
「ふふ、それは俺もかなあ。
こたつになったら嬉しいな。」
「んね。」
智とふたりでくだらない話をして
お会計へ向かった。
「あー、コーヒーゼリー
ちょっとキツかったかも。」
「冷えた?」
「…かも。」
「もー、仕方ないなぁ。
ほれ。」
智にマフラーを巻き付けてから
コートを羽織らせる。
…あー、なんか、似合う。
ちょっと明るい茶色の
ダッフルコート。
智にぴったりな気がする。
ていうか俺より似合ってね?
「ん〜、雅紀の匂いする」
「そりゃ俺のですから」
「ふふっ笑
だよね。
俺、この匂い好きだよ。」
ふわり、と柔らかい笑みを浮かべて
俺の手を取り、歩き始めた智。
「……あのさ、」
「ん?」
「今度の休みって、いつかな?」
智がなにかを言いたげな目で
そんなことを聞いてきた。
「あー…。あ、そっか。
智の誕生日か。」
「う、うん。
もし、雅紀がよかったらな、
って思ってさ。」
「空いてると思うよ。多分。
今週で新人戦終わるし。
あー、もうそんな経つかぁ。」
「…またさ、ふたりでどっかいこ」
「ん。」
智の俺より小さな手を
きゅっと力を入れて
握り締めた。