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方位磁石の指す方向。

第6章 scene 5.5






「わ、ここの公園、
懐かしいねぇ〜」


雅紀がニコニコしながら
ブランコにのる。

俺は雅紀の膝の上にのって、
抱き締められてる。


「あー、智の体あったけ〜」

「んふふ、そう?」

「うん、ほんと好き。」


ぎゅっと握り締められた
手が、体が。

どうしようもなく
熱くて。温かくて。

愛されてるって実感が
できるんだ。


「ね、智。
なんか欲しいものとかあるの?」

「…ない。」

「え、」

「でも、強いて言うなら…
雅紀とのゆっくりした時間が
欲しいかな。」

「ふふっ、お安い御用で。」


雅紀が何かを思いついたように
笑い始めた。


「楽しみにしててね。智。

あ、もう暗くなっちゃったね。
帰る?」

「まだ十分しか
経ってない…」

「…でも、もう暗いよ?
危ないから帰ろ?」

「…仕方ないなぁ。

……明日も、部活?」

「うん。
でももう少しで終わるよ。
だから、一緒に帰れるよ、もうじきね。」


雅紀がいつもに増して
優しく笑った気がした。

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