方位磁石の指す方向。
第6章 scene 5.5
次の日の朝は、
いつもより早く起きた。
「智ぃ、俺のマンガ知らない?」
「あ、ごめん。
それ借りてた。」
「…一言言ってから
借りるけよな。」
「ごめんってぇー…。
あ、俺のおすすめのマンガ
読ませてあげるからぁー…」
「お前のおすすめって
面白くないからいい。」
「ひでぇ。」
義理の弟ながら、
子供らしくない。
そして可愛らしくない。
「あ、翔ちゃん
言ってたんだけどさぁ。」
「なに!?」
食いつきいいな、とか
思いながら和を見た。
「お前、翔ちゃんと
連絡とってる?」
「え、いや…テスト期間だし。
あっちも忙しいだろうな、って」
「そのことについてなんだけどさぁ、
翔ちゃんにちょくちょく
連絡いれてやってくんね?
なんか落ち込んでるみたいだから。」
「えっ、今すぐ送る!」
「それは迷惑だからやめろ。」
スマホを取り出した和の頭を
ぺしっと叩いてから、
スマホを取り上げた。
「夜の方がいいと思うぞ、俺は。
勉強してる時に
好きな人からメール来たら
嬉しいだろ?」
「まぁ…うん。」
「ってことで、よろしくな。
じゃあ俺、もう行くから」
「んー、」
和はいつも準備が遅い。
だから、俺は和よりも先に、
雅紀と翔ちゃんと
一緒に登校するために。