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方位磁石の指す方向。

第6章 scene 5.5






すっかり冬らしくなった
街を二人で寄り添いながら歩く。


「わっ、見て!
このくま可愛くない?」

「…智のが可愛い」

「そーじゃなくてぇ、もう…」

「ふふっ。うそうそ。
可愛いね、智みたいって
言った方がよかったのかな?」

「っ…!」


間近で微笑まれて
心臓が跳ねる。

…あー、もう。


未だに慣れないこの動悸。

いつになったら、
慣れるんだろう?


…それとも、

ずっとドキドキされっぱなし?



…あーでも、
後者の方がいいかな。


慣れちゃうのは嫌かな。


どうせなら、
ずっとドキドキさせて欲しいよ。


「…っくしゅ!」

「智、だいじょぶ?
寒かったら言ってね?」

「や、だいじょぶ、」

「そう?
手ぇ繋いでる?」

「…うん、」


繋がれた右手が
ホカホカしてる。

幸せな気分になる。


まさきの横顔を見つめながら
ひとり、幸せな気分に浸っていた。

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