テキストサイズ

なぜ?

第17章 悪夢

トン、トン。
医者と看護師が階段を降りてきた。

「先生!名津子は?」
「処置は完了です。アフターピルも飲ませましたので、妊娠の可能性もないでしょう。体のキズも3日ぐらいで治まるでしょう。ただね…」
「ただ…何ですか?」
「厄介なクスリを飲まされたみたいで、しばらく幻覚や幻聴があると思います。それに、精神的なダメージが大きい。今は眠ってますが、目が醒めたときに、どういう状態になるかは…」
「…」

俺は週末には韓国に帰らないといけない。
名津子のそばに居てやりたいが、どうしてもスケジュール上、無理だ。

「キミがジュノくん?」
「はい。そうです。」
「そうかそうか。私はね慶一郎くんと竹馬の友でね、この前慶一郎くんが、俺に息子ができるかもしれん。って喜んでたんだよ。」
「…そうなんですか。」
「名津子ちゃんに私がしてあげられるのは残念だけど、ここまでだ。後はジュノくんが支えてやってくれないかな?」
「…はい。」

俺の返事を聞き、笑顔で帰っていった。


俺は、名津子の部屋に向かった。後ろからヒョンたちも着いてきた。

「名津子…」
クスリでぐっすりと眠る名津子。頭をゆっくりと撫でてやる。
「ごめんな。名津子。守ってやれなくて、ごめんな。」

ドアのところで無言でヒョンたちが立っていた。

「ヒョン、俺って週末戻んないとダメかな?」
「残念だが、ドラマが待ってる。無理だ。」
「名津子を置いて?」
「ジュノ…気持ちはわかるが、名津子は自分のせいでジュノが仕事に穴を空けるのは、納得しないと思うぞ。」

テクヒョンの言うことはもっともだ。
でも、俺は名津子のそばにいたい。

「ジュノ、休みの度に日本に来ればいいだろう?休みをまとめるなら、何とかなるはずだ。」
「うん。そうだね。マネージャーに相談する。」


「俺…名津子と一緒にいる。ヒョンたちは休んで。」
「ああ、無理するなよ。」
「おやすみジュノ。」

俺はやっと名津子と二人になれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ