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なぜ?

第5章 癒し

「何、弾いてたの?」
「…えっ?ああ…ジュノさんが生まれる前に流行った曲。」
「聴きたい。もう一度弾いてよ。」
「歌手の前で弾くのってすっごく勇気がいるんですけど。」
「俺、今は歌手じゃない。」
ただのイジュノ。名津子は俺が本当の自分に戻れる場所。


ゆっくりとしたメロディが流れる。英語の歌詞が名津子の声がピアノの音と重なり、俺の耳に届いた。キレイな曲だな。でも、何て言ってんだ?すぐに意味がわからない。

「…nothing´s gonna change my love for you…」
繰返し出てくるサビの歌詞。変わらぬ想い。

途中サビが被さってリピートされる。俺は、当然のようにサビを被せた。
名津子が俺の方を振り返った。
ちっ近いっ!頬が頭に当たってる!すっごい恥ずかしい!


曲が終わった瞬間、俺は恥ずかしさのあまり名津子から急に離れた。

「キレイな曲だな。何て曲?」
「サビの歌詞そのまんま、nothing´s gonna change my love for you」
「俺への想いってことでいいの?」
「…はい。」

マジかよ。うれしい!うれし過ぎる!
「俺、部屋に戻るよ。名津子は?」
「私は、もう少ししたら帰ります。」
「明日、遅れんなよ。」
「はい。おやすみなさい。」

俺は名津子に見送られ、ドアを開けた。
外に出ても帰りがたくてドアをすぐに閉められなかった。

えっ?何、このメロディ。
俺の知らない曲だった。やっぱり歌詞は英語。悲しい曲だった。
最後まで聴き、静かにドアを閉めた。



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