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その日俺はみんなより一足先に帰った。

「ただいま～。」
いつも出迎えてくれる名津子の姿がない。
店かな…？靴を脱ごうとして、俺の目に年配の男性が履いてそうな革靴が目に入った。
誰…？足音を消して、リビングに近づいた。

ドアの向こうから聞こえる名津子の声。
一気にドアを開けると、オジサンと向かい合う名津子と目があった。
「おかえりなさい！早かったね！」
「うん…名津子、誰？」

俺が訊くと同時にオジサンは立ち上がった。
「戸田慶一郎です。名津子の伯父です。」
「あっ…伯父さん？イジュノです。お会いできて光栄です。」
差し出された手を握り顔を見た。あれ…どこかで見たことある？

「じゃあ私はそろそろ失礼するよ。イジュノさん、名津子をよろしくお願いしますね。名津子、またな。」
「うん。伯父様も気をつけて。」

名津子は伯父を見送りに玄関に向かった。


「ねえテクヒョン。戸田慶一郎って誰だっけ？」
「はっ？！オマエ、もしかして知らない？数年前の総理大臣じゃん！」
「えっ！？総理大臣！？俺、今日会ったんだよ。」
「どこで？」
「ここ。」
「なんで？」
「名津子の伯父さんだって。」
「誰が？」
「戸田慶一郎。」
「はあ～～！？」