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僕の大事な眼鏡さん。

第1章 誰か好きな人はいますか?

 眼鏡さんが食事を終え、少しだけ携帯を弄り、先程見せてくれた読みかけの小説を開く。

 数人のお客さんが入れ替わり、最後に入ってきた男性は雨で服がかなり濡れていた。

「秀太、今いるお客様で最後にしようか。看板、しまって。」

「…あっ。すみません、長居してしまって。」

 眼鏡さんは本を閉じて、バッグにしまう。

「傘はありますか?結構、降ってますよ?」

 店長もキッチンから出て来て、窓の外を見る。

「あら、本当。あ、でも私の住んでるマンションはすぐそこですから。走って、五分くらいなんで。」

「あ、店長。なら、僕が送ります。帰り道だし。」

 眼鏡さんはちょっとびっくりしてたけど、少し悩んで了承してくれた。

 我ながら、大胆な作戦だと思う。

 眼鏡さんの事、もっと知りたいな。もっと話がしたいな。

 三十分後、最後の客も帰り、フロアの掃除も終了。

「よし、じゃあ秀太お疲れ様。大事なお客様なんだから、怪我なんかさせるなよ。」

「はーい。お疲れ様でした。」

 裏から傘を用意し、外に出る。かなり、酷い雨の量に苛立つ。

「あの…。僕、風間秀太って言います。」

 まずは、名前から。

「私は佐伯です。佐伯一葉。」

 いちは、さんか。うん、いい名前。

「ちょっと、古くさい名前でしょう?」

「えっ?いいえ。素敵な名前だと思います。」

 ちょっと、照れてしまった。

 傘を広げ、眼鏡さんに向ける。大きな傘だけど、ボストンバッグもなるべく入るように頑張ってみる。

 こうやって並んでみると、以外と小さいんだな。肩の線だって細いし。

「…風間さん。これだと、風間さんの肩が濡れちゃいますよ?」

 少し歩いたけど、雨と風はかなり強くて一葉さんが濡れないように傘を傾ける。

「僕なんて気にしないで下さい。えっと、こっちの道ですか?」

 メイン通りを抜けて、商店街の裏にあるマンションに向かう。僕の住んでるアパートなんて比じゃない。

 七階建てのマンションのエントランスに向かう。

 傘を閉じて、自分の姿を確認すると上着もジーンズもビチャビチャ。靴も靴下もかなりやられてる。

 まぁ、もう帰るだけだからいいか。それに、一葉さんが濡れてないなら良しとするか。

「じゃあ、僕はここで…。」

「あ、あの。風間さん。もしよければ、上着だけでも乾かしませんか?」

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