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エロース …ときめき探求物語

第11章 夏の夜のアヤマチ …隠されてたトラウマ

『いらっしゃい!!』

咲は満面の笑みをたたえて
豊を玄関で迎えた。

『咲ちゃん、久しぶり。もうすっかり可愛い奥さんだね。 ご無沙汰してました。これ… つまらないものですが…。』

と豊は
咲に手土産を渡した。
その手土産は
咲が大好きだった
【洋菓子屋レイン】の
【桃まるごとケーキ】だった

レインは咲の実家近くにある
老舗の洋菓子店で
咲は子供の頃から
この店の夏限定の【桃まるごとケーキ】が
大好きだったのを
豊は覚えてくれていたのだ。


『キャっ!!懐かしいなぁ~♪私の大好物。豊が昔、おばさんと私んちに遊びにきてくれるとき、いつも買ってきてくれたよね!!』
と咲は
遠い記憶を辿っていた。

『あ!!おばさんは、お元気?』

『うん…おかげさまでね。』

『ところで豊は、今、どこで暮らしてるの?うちの母からは、豊の家族は外国に急にいくことになったから、もうなかなか会えないって教えられてたんだけど…』

『え?あっ……そうだね。実はずいぶん前に日本に戻っていて、今は横浜で暮らしています。』
と豊は答えた…

答えながら…

そっか…
外国にいったことになってたんだね…

俺はそれほどの嘘を
咲ちゃんのご両親につかせるほどの
とんでもないことを
従妹の咲ちゃんにしちゃったんだよな…
しかも
パトスの言うように…
あの夏の夜のことは
咲ちゃん自身が
無かったことにして記憶に封印をかけてる…

俺はやっぱり
罪作りか……………

豊は
咲に通されたリビングから
キッチンで嬉しそうに
桃まるごとケーキを
皿に取り分けている咲を見つめて
心のなかで呟いた。

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