アップルパイと君の隣で
第1章 先輩キスして下さい。
私、神戸間 颯那(かとま はやな)は今まさに人生の岐路に立っている。
否、立たされていた。
「先輩」
耳元で甘く呟かれたその声に体が波打つのが分かる。
「っ//どうしたの...?」
後輩の松甫 佳奈(まつうら かな)によって後輩の部屋の壁に追い詰められている。
胸を押し付けられ、頬に両手をそえられた状態で足の付け根から伝わる鼓動。
心なしか息もあがっているように見える。
「先輩、キスして下さい」
そして今、幻聴が聞こえた気がする。
「誰に...?」
恐る恐る問いかけると佳奈は不敵な笑みを浮かべた。
「私にですよ?」
決まってるじゃないですかぁという声が聞こえてきそうである。
内向きに女の子らしく巻かれたサラサラのショートヘアが微かに揺れる。
「はっ?なんでよ?」
今この状態にあることが理解出来ないでいた。