愛のカタチ
第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~
智「いい加減うるさい」
とうとう煩いときた。
和「ちょ、煩いって...」
智「だってうるさいんだもん」
和「...後悔してるんだよ」
智「わかってるよそんなの」
和「だったら」
俺の話を聞け。
弁解する訳じゃないし、言い訳を述べるつもりでも無い。
だけど後悔してる。それは、本当の事だ。
和「出来れば、時間を戻せたらいいのにって...」
智「無かった事にしたいんだ?」
和「...そういう訳じゃ無いよ」
智「でも後悔してるって事は、そういう事でしょ? 忘れたいって、事なんでしょ?」
和「違...、いや、そうなのかな...。自分のした事は最低だし、忘れちゃいけないって思ってるけど」
智「けど?」
和「でも、出来れば」
智「うん」
和「お前を傷付ける前に戻りたい。...お前を、傷付けたくないんだよ」
智は朝日を背に浴びたまま俺を見てる。
逆光を浴びる智は淡く霞んで、身体の周りが光で縁取られているんだ。
その智は淡くて、手を伸ばすと身体を貫いてしまうんじゃないかと思えた。
智「時間は戻せないよ?」
和「分かってる」
智「どんなに願っても、過去は変わらないんだよ?」
和「うん。ごめん...」
俺が肩を落とすと智は笑うんだ。
少し俺に歩み寄って、ふわっと、笑う。
智「俺も、忘れないよ」
和「え...」
智「忘れようかなって、記憶から消し去ろうかなって一瞬思ったけど。でも、やっぱやめた」
和「どうして...」
智「だって忘れたらまた、繰り返しちゃうかもしれないじゃん」
和「忘れなくて、辛くないの...?」
智「...傷くらいあった方がいいんだよ」
一瞬目線を落としたけど、すぐに俺を見上げるんだ。
智「治さなくていい。だって生きた証でしょ?」
俺をしっかりと見つめて、だからお前も忘れるなと、智の瞳はそう言う。
智「俺だけじゃないよ?」
和「え?」
和「傷を負ったのは、カズも同じでしょ?」
近くまで来た智は、そっと俺の胸に手を当てた。
智「だから、忘れないで...」
治さなくていいと言うのに、俺の胸を癒す様に撫でるんだ。
そうすると、俺の胸はじんわりと温かくなって。
俺の傷は、その痛みを察知した智によって癒されてしまうんだ。