愛のカタチ
第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~
智「...ぷっ」
和「え?」
智「どうしたの? ぼーっとして」
和「あ...、いや、掴めるなと...」
俺の胸を撫でるその手首を握っていた。
智「そりゃそうでしょ」
和「うん...」
淡くて、透けてて。
触れたら突き抜けてしまうかと思った。
だけど智の手は、しっかりと俺の胸に添えられているし。
その手首も、しっかりと掴めた。
和「羽根は...?」
智「羽根?」
和「まだある...?」
智「へ?」
怪訝そうな顔をして小首を傾げた。
その傾いた顔の後ろに、チラッと白い羽根が覗いたんだ。
和「あぁ...、よかった...。無くなったかと思った...」
智「なにが?」
キラキラと眩しく光り、ふわふわと白い羽根を纏う。
その笑顔はふんわりと柔らかく、話す声はとても甘い。
和「天使の、羽根」
智「は...?」
どうしちゃったの、頭おかしくなっちゃったの? と俺を見て笑うんだ。
智「着替えるからあっちいって」
俺に背を向けて徐ろに服を脱ぐ。
コイツは天使じゃない。
その背に羽根なんて無い筈なのに、何故か俺の目に映る白くてふわふわしたモノ。
智「も~。出てけってば」
和「あ、ああ、ごめん」
人間だとわかってる。
天使なんて幻想だと、わかってるんだ。
だけどその存在は、天使と言わなければ何と言うのか。
智「んじゃ俺行くね」
和「えっ、もう?」
智「花屋は早いの」
和「じゃ俺も」
智「カズはまだ時間あるでしょ」
和「でも」
智「いつもより1時間も早いじゃん」
和「どうして分かるの」
智「だって毎朝、すんごい背中丸めて店の前通ってるじゃん」
和「え...?」
智「めちゃくちゃ暗い奴いるなぁって、いつも思ってたんだよね(笑)」
智は思い出し笑いをするんだ。
和「俺が通ってる事、知ってたの?」
智「綺麗な花が沢山あるのに見向きもしないでさ。毎日つまんなさそうに歩いてたでしょ?」
和「つまんなさそうに、ね(笑)」
俺が足を止めたのは、コイツを見付けたから。
天使を見付けたから、思わず足を止めたんだ。
だけどもっと前から居たのか。
毎日地面しか見てなかったんだ。
だからこんな近くに天使がいるなんて、俺は気付かなかったんだ。