愛のカタチ
第2章 NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~
目映い。
淡い光の中に、俺は居る。
智は先に出勤したし、俺はいつもの時間に家を出た。
その道中、俺は眩しくて眉をひそめて歩いた。
和「このポスト、こんなに赤かったっけ...」
俺はいつも地面を見て歩いてた。
背を丸め、俯きながらすぐ下の地面を見る。
その道路はグレーで、ふと顔を上げても、周りの景色も同じ色をしていた。
出来たてのアスファルトじゃない、少し色の落ちた薄いグレー。
俺の目に映る景色は、いつもそれと同じだった。
和「あ」
智がズブ濡れで蹲っていた電柱の元からは、小さくて可愛い青い花が咲いていた。
和「へえ、こんなとこに」
毎日何の代わり映えもしなくて平凡で。
薄いグレーの世界をトボトボと歩く。
だからこんな所に花が咲いている事も、ポストが目の覚めるような真っ赤だという事にも、気付かなかった。
和「眩しいな...」
花屋の前まで来ると、その姿こそ見えていないのに淡く光る店内。
思えば俺が初めて智を見た時感じた眩しさは、いつぶりだっただろう。
和「あ...」
その店内を少し覗くと、キラキラと光るモノがあちらこちらにふわりと移動している。
和「ふふ...」
その正体は紛れも無くアイツで、俺の目に映るそれは、間違い無く天使なんだ。
智「あ...、カズ!」
和「ふふ、サトシ」
ふわりと俺の元に降り立つ天使。
智「...なんだよ。いい顔して笑えるんじゃん」
和「え?(笑)」
俺は笑みを零していたのか。
そんな感覚、凄く久しぶりかもしれない。
智「ふふっ、いってらっしゃい」
俺に笑顔を向けて手をひらひらと振る。
その柔らかい笑みと、目映い光に押されて俺はしっかりと前を向いて脚を踏み出せる。
まだバラ色と言う訳じゃ無いけど。
だけど俺の世界に色がついた。
グレーの景色が、色鮮やかに光って見える。
それは明らかに智の仕業で、俺がそんな事を思っているなんて何も知らずにニコニコと手を振っているんだ。
出だしは最悪だし、順序だっておかしい。
だけどいいか?
智という天使に、恋をしてもいいか?
和「ん。いってきます」
この色付く世界で、俺は今から天使に恋をするんだ。
NO~サラリーマン×花屋~天使みつけた編~完~