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愛のカタチ

第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~



話が違う。

胸が擽ったくなるって言ったじゃないか。


智「え...、握手? まだ早くない?(笑)」


俺の好きなその手で他の奴に触れて。


智「ふふ、何それ。頭撫でて欲しいの?」


だからその手で触れるなって。


智「あ...、二宮くん」


だってその手は


智「久し振りだね」


俺のだろ?


智「...どうした?」

和「べつに」


女生徒を掻き分け先生は俺の元にやって来たけど、その後ろに保健の先生もくっついてるし。


智「二宮くん?」

和「...触んなよ」


なんだかイライラして、俺の頭に置かれた手を振り払ってしまったんだ。


智「...コイツ明日で卒業なんで」


振り払われた手を落としたまま、先生は俺に背を向けて。


智「今日が最後だから、ちょっとカウンセリングしてきます」

「え、でももう時間ですよ?」

智「少し遅れるって言っといて貰えます? 今すぐじゃなきゃ駄目なんで」


保健の先生の返事を待たないまま、落とした手に力を込めて俺の手を取る。


和「ちょ、離せよ」

智「いいから」


離せと腕を振っても離さなくて。
俺の手を取ったまま先生はズンズンと進んで行く。

いつもならその手の温もりに心がふわっと暖かくなるのに、今日はなんだか胸がざわざわして。


和「っ、なんなんだよっ」


放り込まれたカウンセリングルームで先生を睨み付けた。


和「離...っ」


離せと手を振り切ろうとした。

その瞬間、俺の身体はふんわりとして。


智「会いたかったよ…」


俺の手をぎゅっと握ったまま、片手で俺の身体を包んだ。


智「ふふ、ヤキモチ?」


俺の首に顔を埋めて柔らかい息を吐いて。


智「冷えた目をする事はあったけど、ちゃんと怒れるんだな」

和「え...?」


イライラしてたのに、俺を抱き締めるその心地良さに惑わされてしまって。


智「可愛いよ、怒った顔も...」


そう言って、首に埋めた顔を離して俺を覗くんだ。

俺の好きな、しなやかなのに男らしい手で俺の頬を包んで。


智「二宮...」


廊下では見せなかった。

皆の前では出さなかった、その大人の雰囲気を先生は纏う。



これを見られるのは、俺だけなんだ。







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