愛のカタチ
第3章 ON~カウンセラー×生徒~カモフラージュ編~
まだあと2週間もあるのか。長いな。
雅「わ、なにあれ。もみくちゃじゃん」
潤「今月末で辞めるんでしょ? その話が広まったからじゃない?」
あれから先生と会ってない。
俺は長い春休みに突入して、今日は明日の卒業式の予行演習で久々に学校に来たんだ。
潤「助けてやらなくていいの?」
和「俺が? なんで?」
翔「だってお前先生のお気に入りじゃん」
和「へ」
確かに他の生徒よりはよくカウンセリングルームに通ったし、仲のいい方だとは思ってたけど。
周りからはそう見えてたんだ。
雅「ニノだって懐いてたじゃん。助けてやりなよ、先生困ってるよ?」
懐いてたとか。そんな風に見えてたのか。
潤「じゃあ俺ら先、体育館行ってるから」
和「え」
翔「あ、あのエロ先生も乱入してる(笑)」
雅「エロ先生?」
翔「保健の先生な(笑)」
なんだと。
耳障りの悪い猫なで声が聞こえると思ったらまたアイツか。
それはこうしちゃいられないな。
和「せん...」
皆を見送り俺はザワつく廊下の方へくるっと向き直った。
元気に声を掛けて、久しぶりと駆け寄って。
それで、俺の顔を見て笑顔を零す先生を連れ出そうと思ったんだ。
だけど。
智「わかってるよ。大丈夫。皆の事忘れないから」
女生徒にもみくちゃにされてる先生は既に笑顔を放っていたんだ。
智「ふふ、俺も楽しかったよ。皆に会えなくなるのが寂しいな」
ニコニコと笑って、ふわふわと柔らかい空気を纏って。
智「君はあれからどう? 少しは解決した?」
俺の他にもカウンセリングルームに通う生徒だって勿論いるし。
智「ふふ、そっか。良かった。...うん、ちゃんと笑ってるね」
君の笑顔が見れて嬉しいよ、なんて言いながら頭をぽんぽん撫でてるんだ。
智「また新しい人が来るから、困った事があったらちゃんと話を聞いて貰うんだよ?」
ドキドキきゅんきゅんってなんだ。
いつも俺に向けたその笑顔を惜しみ無く放って。
胸は確かにきゅっとするけど。
智「うん、うん...。ふふ、俺も忘れないよ」
だけどそれはドキドキなんかじゃない。
心臓が小さくなって止まりそうで、なんだか少し痛くすらなって。
苦しいんだ。
それでも俺は、楽しくなれると言うのか。