天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
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白い雪が舞い始めた12月
「え…まぢで婚約したの!?」
舞弥は驚きのあまり、卵焼きを落とした。
「バカッ!!声がデカイ!!」
お陰でクラスの皆の視線が私に痛いくらいに刺さる。
『え…あの篠原が!?』
『嘘みた~い』
嘘だったら私が一番困るよ……
パーティーから1ヶ月後、私とアルトさんは正式に婚約した。
婚約したのだから、もう執事の仕事はしなくてもよくなったのだが、アルトさんはずっと執事の仕事をしたままだ。
夜中はずっと父さんの企業について勉強してるし。
父さんは私が高校を卒業してから結婚するまで、企業は自分で運営すると言っていた。
婚約直後ついでにこんなことも言いつけられた。
『いいかッ!?いくら婚約するとはいえ、菜月が高校を卒業するまで、やましいことは許さん!!』
いやまず…アルトさんって
そういう人じゃないと思うんだけどな……
『男女関係における恋のABCにおいて、結婚までBとCは断じて許さん!!』
男女関係における恋のABCって何…?
私は何もわからず、ただ頷いたが、隣にいたアルトさんは顔が真っ赤だった。
そのあとアルトさんに私は訊いてみた。
『アルトさん、恋のABCって何?』
『うっ……あの、奥様や旦那様にお聞きください…』
そう言うと顔を真っ赤にしたまま、そそくさとどこかへ行ってしまった。