天然執事はいかがです?
第16章 二人きりの旅行
「舞弥は分かる?恋のABC」
「ううん、分かんない。後でお父さんに聞いてみよっかな」
「うーん…」
家に帰ると、私は早速母さんに訊いてみた。
「母さん」
「な~に?」
「恋のABCって何?」
「まぁ!!誰からそんな言葉教わったの!?」
母さんは目と口を丸め、とんでもなく驚いた。
「え…父さんから……」
「まぁ…あの人ったら……
いい?菜月」
そう言うと急に声を潜めた。
(恋のABCは
Aはキス、Bは裸になってあんなことやそんなこと、Cは……合体……とでも言うのかしら………昭和時代はそう表現してたのよ……)
母さんは赤い頬をポリポリと掻きながら、そう言った。
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―――
「聞かなきゃよかった……」
私はベッドに座ると、顔を両手で覆った。
だからアルトさんはあんなに顔を真っ赤してたのか……
知っていたが故に。
「おや、お嬢様。お帰りになっておられたのですか?」
「あ…うん……」
ヤバい…
アルトさんの顔ちゃんと見れない……!!
「お嬢様?どうかされたのですか?」
「何でもないよ!?何でもない!!」
「そう…ですか?
では、今紅茶をご用意いたしますね」
アルトさんはそう言って部屋から消えた。