天然執事はいかがです?
第3章 新任の執事
「ただいまー」
『お帰りなさいませ、菜月お嬢様』
大勢の使用人達が菜月の帰りを待ち、出迎えをした。
その中から藤原老人が一歩前に出た。
「お嬢様、お召し物はそのままでよろしいですので、リビングへ」
「うん」
自分の青いスリッパに履き替え、私は爺やについて行った。
大きな扉を引き、手をリビングへと差し出す。
「さぁ、どうぞ」
中にはもう母さんが待っていた。
父さんは相変わらず海外での仕事が忙しいのか、やっぱり帰ってきてなかった。
フカフカすぎるソファに腰掛ける母さん。
私は母さんの隣に、腰掛けた。
「お帰りなさい、菜月」
「ただいま。父さんはいつ頃帰ってくるの?」
「うーん…明後日くらいかしらね~。お母さんも良くわからないの」
「そう…」
訊いた私がバカでした。
暢気な母さんがそんなことに知ってるはずないもんなぁ…
明後日なんて絶対あり得ない。
難しい企業との何かだって聞いたから、精々3ヶ月くらいだろう。
私は笑顔を絶やさない母さんを見て、そう思った。
コンコンと扉をノックする音がする。
「お二人とも、来ましたよ。
入りなさい」
爺やが扉の向こう側の新しく配属された執事に声を掛けた。