天然執事はいかがです?
第3章 新任の執事
扉の向こう側から、失礼します、と声がする。
キレイで落ち着いた声だった。
次第に心臓の心拍数が徐々にだが、あがってくる。
どんな人だろう…
声からして若い人だよね……
声の主は部屋に入り、私達母子の前で立ち止まり、新しい執事は一礼をした。
「今日から篠原家で仕えさせていただきます。アルトです。どうぞよろしくお願い致します」
深々とアルトさんはお辞儀をした。
「篠原 美子です。アルト君よろしくね」
「あっ、と…篠原 菜月です。よろしくお願いします……」
私は思わず見とれてしまった。
それは例のマッチ棒さんを思い出す風貌だったから。
華奢な体に纏った執事の服、マッチ棒さんみたいに雪のように白くくすみのない肌、漆黒の闇の瞳と髪。
私とは正反対で、寝癖なんて一つもない。
両耳には、碧の小さなワンポイントのピアスがしてあった。
無表情だと冷たいカンジがするが、笑っているので優しい雰囲気がする。
見たカンジ20歳以下だよね……
同い年か、年上、かな…?
私はまじまじと見ながら、そう思った。