天然執事はいかがです?
第6章 価値と気持ち
アルトさんが私の専属執事になってから三週間ほど経った。
「ただいまー…」
「お帰りなさいませ、菜月お嬢様」
「アルトさん、ちょっと来て…」
「はい…?」
私は外へと手招きをした。
アルトさんに見せたのは私の大事な青い自転車。
「パンク…してますね」
これがなきゃ、通学できない。
「うん……それでね、直せる?」
「うーん…」
アルトさんは悩ましい顔をした。
「確か、エアポンプも壊れてお嬢様がお捨てになったと、藤原様から聞いておりますが……」
「あっ」
忘れてた…!!
あのときは、後で買おうと思って…で、忘れちゃったんだ……
私はアホなのだろうか……
「アルトさん今から買いに行こッ!!ホーマック行こ!!」
いやまずこの人免許持ってるのか…!?
「それが……」
アルトさんは車を止めているところを見た。
「屋敷の車も無いのです。車検に出したものと、先程他の方が残りの一台で、ある用事で出掛けられましたから……」
「そんなぁぁ…」
じゃあ明日学校には…
「車しかないのか…車嫌いなのにぃ……」
理由・目立つから。
「申し訳ございません…」
「いやアルトさんは悪くないから…謝んなくていいよ?」
悪いのはエアポンプをすぐに買おうとしなかった私。
言うなれば自業自得ってわけだ。