天然執事はいかがです?
第7章 波乱の休日
「聞いてた話の通り執事としてプライドは高いんだね。
でもそれじゃ菜月がまた泣く羽目になる」
アルトの肩が動いた。
「お嬢様が早退した日ですか」
「えぇ。菜月、酷く傷ついてたわよ。それでも執事だからって自分の気持ち隠すの?」
「…………」
アルトは答えず、まっすぐに前を見た。
…いや、答えられなかった。
その目はどこか不安気で遠くを見つめていた。
舞弥の家に着くまで車内は沈黙していた。
「アルトさん、今日はありがとう」
「…いえ」
「……私の言ったこと忘れないでください」
二人は目を合わせずに会話した。
舞弥は静かにドアを閉め、家の中へと消えた。
アルトはそれをきっちり見送ってから車を走らせた。
"執事だからって自分の気持ち隠すの?"
では…舞弥様。
私は………
俺はどうすれば良いんです?
アルトは暗い気持ちのまま、車を走らせた。
彼とは裏腹に、菜月はすやすやと何も知らずに眠っていた。